「お~いお茶」が生まれた日。商品名とパッケージについてのおはなし。【#開発裏ばなし】
伊藤園を代表する商品「お~いお茶」。実は、「お~いお茶」が誕生するまでには、10年以上の開発期間と、日の目を見ない日々に苦悩した4年もの歳月がありました。
本日は、そんな「お~いお茶」の商品名と、パッケージデザインについての裏ばなしをお届けします。
1984年 世界初の緑茶飲料「缶入り煎茶」を開発するも・・・
さまざまな課題を解決し、緑茶を飲料化したは良いものの、お茶は家でタダで飲むものという時代でした。そう、発売したものの、売れなかったのです。
当時社内では、「緑茶はインドア商品。アウトドアにすることに意味がある。」と言われていました。緑茶飲料の可能性を信じるもの、本当に売れるのだろうかと感じるもの、社内の雰囲気は半信半疑。どうしたら、甘くない緑茶の缶飲料に100円の価値を見出してもらえるのか、商品担当者は苦悩していたと言います。
▲1984年に製品化に成功した、缶入り煎茶。
というのも、80年代後半の飲料売場は有糖飲料が主力。ジュースや炭酸飲料がたくさん並んでいました。
▲80年代の飲料売り場の一例。無糖茶飲料は主流ではなかった。
あっという間に発売から3年が経とうとしていた1988の秋、鳴かず飛ばずの状況に、リニューアルプロジェクトが始動しました。リニューアルのポイントは商品名。実は、販売していた「煎茶」という名前ですが、煎の字が読めないというご意見が多く寄せられていたのでした。
苦悩の末のリニューアル「煎茶」から「お~いお茶」へ
「お茶」「煎茶」「せん茶」「お~いお茶」・・・リニューアル4か月前のデザイン案を見てみると、商品名を確定するまでの悩みが伝わってくるような気がしました。なかには、「お~いお茶」の雰囲気を感じるデザインも。
▲1988年10月時点のデザイン案。
ちなみに「お~いお茶」というフレーズは、70年代から伊藤園のリーフ商品のテレビCMで使用していました。俳優・島田正吾さん(故人)がおっとりした口調で呼びかけるCMは「家庭的な雰囲気」を表現するのに適していると考えたそうです。
▲「お~いお茶」の名前の由来になった、島田正吾さんのテレビCM。
商品名に合うデザインは、緑茶のもつ「自然なイメージ」や「伝統性」を表現する、おにぎりを包んでいる竹皮や、水筒代わりの竹筒から、竹をモチーフにすることが決まりました。
デザイナーは「デザインをするなら竹も本物の青竹でなければ!」と、師走の銀座を駆け回り、銀座で直径10センチ、長さ1メートルほどの門松用の青竹を見つけ、六本木の事務所まで抱えて走ったそうです。
公式初公開「お~いお茶」の書家 安達 花鏡(あだち かきょう)先生
お~いお茶のデザインを語る上で、アイコンになっている書。
デザイナーを通じ「お~いお茶の書を書いて欲しい」と依頼を受けた、安達先生はこう感じたそうです。
「お茶・・・売れるの?」
それでも、商品名の「お~いお茶」を聞いてから、意外と悩まずに筆を動かすことができたと言います。
「お茶は口にいれるものなので、文字は鋭角でないものを。最初は「お茶」と同じ書体で「お~い」を書きましたが字に重さがありました。「お~い」は呼びかけている感じが良いと考え軽い感じを出しました。」
そうして、1989年2月に発売を迎えた「お~いお茶」のパッケージがこちら。
▲1989年2月発売の「お~いお茶 せん茶」パッケージ(左)
現在販売中の「お~いお茶 緑茶」パッケージ(右)
改めて見ると、「お」の書体が全然違うことに気が付きます。「お~い」の流れるような軽やかな雰囲気が伝わってくるようです。
8月23日(月)より日本の秋”彩り”パッケージ展開中
本年は、秋桜、紅葉、銀杏の3種類のパッケージが展開中。竹のデザインや書と一緒に、気分に合わせて秋の訪れをお楽しみください!