1秒1℃の戦い、「お~いお茶」と急須式抽出のおはなし。【#開発裏ばなし】
着色や着香、味付けなど一切しない、「自然なままのおいしさ」を実現する為には原料茶の選定以外にだし方、つまり抽出方法が重要になります。今回は、意外な業界にヒントを得た、お茶と抽出のお話しです。
「たかがお茶、されどお茶」どのような商品も、世の中に出る、その舞台裏には、多くの人々の、それぞれの立場から戦わせる意見、試行錯誤、まさに「産みの苦しみ」を経て誕生します。「#開発裏ばなし」では、「お~いお茶」開発物語をお届けしています。
急須でいれたい!だって緑茶だから・・・
緑茶をいれる茶器に急須があるのを、皆様ご存じかと思います。温度や時間で、お好きな味へと簡単に調整できます。伊藤園でも、お茶系の飲料を市場で初めて商品化した時から急須式の抽出方法にこだわってきました。
▲急須を使用した、おいしいお茶のいれ方を紹介中。おうち時間に急須でいれたお茶はお勧めです!
最初は、実は緑茶ではなく、烏龍茶から始まりました。食文化の多様化、そして当時の痩身ブームに乗って世の中に烏龍茶が注目されました。
1979年8月、伊藤園は、中国土産畜産進出口総公司と日本で初めてウーロン茶の輸入代理店契約を締結し、ウーロン茶(茶葉)の販売を開始しました。
▲北京にて中国土産畜産進出口総公司の代表と長期協約締結
当時、茶業界の販売方法は専門店での量り売りが主流でした。その慣例を破り、直販制度に代表される画期的な営業方法を導入し、パック茶を販売することで、設立から15年、伊藤園の売上は580倍の88憶100万円に達しました。
そんな中、さらなるイノベーションに向け烏龍茶の飲料化を目指したものの、作ろうとしても作り方なんて誰も知りませんでした。
ひたすら探しました・・・
当時の抽出方法は、二通りが主流でした。
一つ目は、ドリップ抽出。
コーヒーを入れるのに、あまりにも有名な方法です。
大量のコーヒー豆粉砕物を、円筒に詰め、上から熱水をかけて蒸らし、熱水をかけ続けて抽出する。大量に抽出が可能で、温度のコントロールも容易なのですが、30分~長いもので1時間。時間がかかり過ぎる為、茶葉の場合、味が出過ぎてしまう懸念がありました。
二つめは、かご式抽出。
巨大なティーバッグをご想像ください。ステンレスでできた巨大なティーバッグ。お湯にじゃぶじゃぶつけて抽出する方法です。数百kgの原料に対処できるのですが、巨大化すると内部までお湯が通らず、一定の味のものを作りにくい。
そのため、探したそうです。急須と全く同じ原理で抽出できる機器を。
茶系飲料の市場がない時代でしたから、面倒臭がられました。バカにもされたそうです。
しかし、あったんです!!!形は違うけれども、原理は全く同じ。ジャムやソースを作るための、食品の加工分野で使われていました。食品原料を溶かしたり、練り合わせたり、熱をかけたり。しかも、急須と同じように90°傾けて出すことまで同じ。
▲「お~いお茶」で現在も使用している急須式抽出機。
かくして1980年の9月、烏龍茶の飲料化に成功し、世界初の「缶入りウーロン茶」を一部地域で先行発売することに繋がります。
「無香料・無調味、自然なままの美味しさ」の追求は、現在も変わらない。
1秒1℃。飽くなき闘いは今日も続く
それ以来、伊藤園は急須式抽出にこだわり続けています。機器の進化もありますが、なんせ1℃刻みで温度と、お茶っ葉の開き具合を見極める、分秒単位の時間のコントロールでお茶っ葉の開き具合を見極めることが可能になりました。
ちなみに、緑茶のおいしさを引き出すには、お茶の葉が開く、その瞬間の見極めが重要です。そのためには、まさに秒単位の勝負になります。
◆◆急須で秒の勝負 やってみた◆◆
今回使用した茶葉は、温度80度、浸出時間40秒が美味しいタイミングです♪
①急須を準備します
②急須にお湯をいれます
③抽出時間に合わせて湯呑にお茶を注ぎます
④10秒、40秒、240秒、それぞれ抽出液の色、味わいが異なります。
飲んでみよう♪
ごくごく。10秒「スッキリ。だけどちょっと物足りない?」
続いて。40秒「旨いっ!渋みも旨味もバッチリ♪そして、香り良し。」
最後は。240秒「ん?これまたおいしいゾ?でも、香りと味のバランスが・・・??」
そう。いずれも、すぐ飲む分には、好みの味で楽しめるのでおいしい。
しかし、茶葉の浸出時間がベストタイミングを過ぎると、ペットボトルの緑茶では、おいしさの天敵が風味に悪さをするように・・・。
△検茶用のお椀で茶葉の広がりをチェック
急須式抽出の実現から42年。今もなお、伊藤園の商品開発チームでは、1秒1℃で抽出と向き合う闘いが続いています。