世界初PET緑茶飲料誕生の裏に モヤモヤとモワモワの闘いあり?!【#開発裏ばなし】
「う~ん。このモヤモヤがぁ」「モワモワが、モヤモヤするんだよっ!」などと、モヤモヤした雰囲気が漂う、平成初期の開発現場。モヤモヤだかモワモワだか。兎にも角にも、世界初のイノベーションの裏に立ちはだかる壁。
どのような商品も、世の中に出る その舞台裏には、多くの人々の、それぞれの立場から戦わせる意見、試行錯誤、まさに「産みの苦しみ」を経て誕生します。
「たかがお茶、されどお茶」
緑茶飲料の可能性を信じ、困難に立ち向かった人たち。
今日は、世界初PET緑茶飲料誕生の裏に渦巻く【モヤモヤ】のお話。
時は【平成】次なる挑戦に立ちはだかる「モヤモヤ」
インドア飲料だった緑茶をアウトドアでも楽しめる飲料に進化させた「お~いお茶」。時は、平成にうつり、人々のライフスタイルは変化し続けていた。女性の社会進出も高まり、家庭内でも、いつでも、すぐに!簡便に!というニーズも高まった。
核家族化が進む一方、冷蔵庫は大型化・・・。「つまり、共働き世帯の買い置き需要が高まってきたということか。ご家庭に大容量のペットボトル緑茶のニーズがあるに違いない!」そう、仮説だてた、緑茶飲料開発チームのメンバー達。
「お茶をペットボトルに詰めるなんて簡単だ。」そう思われる方も多いでしょう。確かにその通り。缶で何とか商品と呼べるものに到達して、すでに、烏龍茶でペットボトル製品を出していましたので、商品企画・開発のメンバー達も当初は簡単に考えていました。
ところが!その裏に大きな壁が待ち受けていたのです!
来る日も、来る日も 行く手を阻む憎き敵「モヤモヤ」の正体
緑茶の抽出液をペットボトルにそのまま詰めるとどうなるか?すぐ飲まれる分には何の問題もありません。しかしこれが、未開封のまま、1週間経ち、1か月経つと問題が起こります。特に濁っている緑茶の場合、濁りはほとんど沈殿して黒い塊になり、気持ち悪い。
宵越しのお茶は飲むな
淹れたてのお茶には、大きい粒子、小さい粒子、重たい粒子、軽い粒子、微細なお茶殻が含まれている。そういった粒子の中でも、そのまま放っておくとお茶の風味を損なわせたり、早く沈殿してしまうような目視で確認出来る程の大きい粒子や、重たい粒子がある。急須で入れたお茶は、作ってその日のうちに味わうから何の問題もないが、「宵越しのお茶は飲むな」という言葉があるように、ひとたび時間が経つと、おいしさの大敵に化けてしまう。
一方、急須で入れたお茶とは異なり、ペットボトルの場合、お茶を詰めてからお飲みいただくまでに時間がかかる。そのために、上記のようなお茶の風味や品質を損なわせる原因の粒子を取り除くことが必要だったのです。ここまでは、ろ過によって比較的安易に取り除くことが出来た。
ところが、ろ過の後に次なる問題が起こります。おいしさの大敵その2、液体一面に「モヤモヤ モワモワ」した浮遊物が生じるのです。
▲これが「モヤモヤ モワモワ」の正体。時間が経つにつれて出現。味・香り・品質に悪影響を及ぼす
ぺットボトルは中身が見えるので、「モヤモヤ モワモワ」では気持ち悪いし、味も悪くする。その原因は、緑茶に微量含まれるカテキンの酸化物と、多糖質、たんぱく質などがくっつきあう自然現象のようです。
「自然なままのおいしさ」を守るのに、どうするか。おいしいの実現に、良い原料茶を使う。しかし、この「モヤモヤモワモワ」良い原料茶を使えば、使うほど激しく出現してしまう・・・。これが大変厄介で、来る日も来る日も、「モヤモヤ モワモワ」七転八倒しましたが、答えは意外に簡単な原理にありました。
「モヤモヤ」打破は、お取引先様の 日本の知恵?!
「モヤモヤ モワモワ」との闘いは、続く・・・。なかなか解決の糸口が見つかりません。そんな時、ふと頭に浮かんだのが、すでにペットボトルの採用が始まっていた、調味料や日本酒等の酒類でした。長時間の保存に耐え、純度とおいしさを保っているぞ?!と。「日本の知恵」があるはず!!
百聞は一見に如かず!
ありました!「モヤモヤモワモワ」の打開策が・・・。皆様、お茶を入れる道具、急須には茶こしが付いていることをご存じかと思います。または、ティーバッグでは、紙の中にお茶っ葉が入っていて、紙が茶こしの役割を果たしています。
あれなんです!茶こしとか、ティーバッグの紙に相当するもの。細か~~な茶こしを考えれば分かり良い。それで、「お~いお茶」は、ミクロンレベルのろ過を行うことにしました。味を変えずに、品質に悪い影響を与える微量な成分だけを取り除く。
▲緑茶飲料に最適な方法「ナチュラル・クリアー製法」の誕生です。
模擬実験 やってみた!
▲左から「急須の茶こし(穴の大きさ約1~2㎜)、「ティーバッグフィルター(穴の大きさ1㎜以下)」、「浄水器(使用してみたのは、多重ろ過の市販品)」
実際は、急須の茶こしの1000分の1㎜以下の微細なろ過を行う。
しかし、浄水器をみても一目瞭然!!驚きの透き通った金色透明に!すぐに飲んでみた「いずれも、おいしい。」つまり、おいしさは損なわず、余計な粒子だけ取り除くということか。
▲1990年3月 世界初ペットボトル入り緑茶飲料「お~いお茶」1.5L発売(左)、1996年11月 今ではお馴染みの500mlペットボトル(右)発売
着色や着香、味付けなど一切しない、「自然なままのおいしさ」で
お客様に喜んでいただきたい。その一心。正直そこまで、やらなくても飲料化はできるんです。でも、いつでも、どこでも、お客様が一口お飲みいただくその瞬間の「おいしい」それに、こだわりたい。お茶を愛しすぎているかもしれません。だからこそ、おいしいお茶をお飲みいただきたくて。
ところが、ペットボトルではまだまだ難問が続きます。そのお話は、また別の機会に。
(※)以上の話は、「お~いお茶」の開発過程に生じた問題と解決で、他社ブランドとの関連性はございません